池口研究室では,「カオス」,「フラクタル」,「非線形」, 「複雑系」をキーワードに様々な研究を行っています. 2002年度の卒業研究のテーマとして以下のような例があります.


  1. デュアル情報表現メカニズムによる脳のモデリング

    我々の脳において,どのような情報処理が行われているのでしょうか. 従来の主流な考え方は, 神経細胞の発火率により定量化されているとするものでした. しかし,近年,神経細胞間を飛び交うパルスの時間間隔によって 情報がコード化されているとする研究成果が発表されています. 本研究では, これらの両者を融合した情報表現に基づくニューラルネットを用いて, 新しい脳のモデルを提案していきます.

  2. 音声信号の非線形モデリングと音声合成への応用

    ヒトが発生する音声信号の自然さには, 非線形性に基づく「揺らぎ」が必要であることが示されています. 本研究では, 音声信号の有する自然さの源を解析すると共に, 得られた知見に基づいて, より自然な音声合成手法の開発を目指しています.

  3. DNA,アミノ酸配列のモチーフ解析,DNA塩基配列の解析

    DNA中に含まれるある特定の遺伝子の共通パターン (モチーフ) を 抽出することが望まれています. 特定の機能を有すると考えられる蛋白質群から, 共通モチーフが抽出できれば, 機能未知蛋白質群の分類などの重要課題が解決されるからです. 本研究室で開発してきた, 組み合わせ最適化問題の高速解探索法を用いて, ゲノム情報科学における重要課題を解決します.

  4. 通信トラフィックデータの解析

    インターネットが広く普及した現在では, 効率の良いネットワークの設計が強く求められています. 従来までに, 様々な仮説に基づくトラフィックデータの解析が行われてきましたが, いずれも十分ではありません. 本研究では, 効率的なネットワーク設計を目的として, フラクタル性を有すると言われる通信トラフィックデータの 統計的な解析し, 新しいトラフィックシステムのモデル化を行います.

  5. 経済指標の解析と為替相場の非線形モデリング化

    高度な金融システムに基づいて経済活動が行われている現代社会におい ては,非常に些細な出来事が金融市場の暴落を誘発する可能性 があります. しかし,このような状況下においても, 経済活動を継続させる必要があります. そこで,日経平均株価, 対ドル円為替相場などのデータを解析することにより, どのような状況下で金融市場が不安定化するのか等の 重要な課題を考えます.

  6. 地震発生機構の解明と予測システムの構築

    「いつ」,「どこで」, 「どの程度」の地震が発生するかを予測することは 非常に重要であるにも関わらず, 未だに解決されていません. 本研究では, 我々が既に提案している「非線形事象のモデル化」 で得られた知見を元に, 日本における地震発生の数理機構の解明を目指し, 信頼性の高い予測システムの構築を目標としています.

  7. カオスダイナミクスを用いた 組み合わせ最適化問題の解法開発とその応用

    カオスの有する「揺らぎ」を組み合わせ最適化問題の解探索に適用し、 従来の手法を凌駕する高能率な新しいアルゴリズムを提案することで, 工学的に貢献することを目的としています。 巡回セールスマン問題,2次割り当て問題等に対して, 高性能なアルゴリズムを提案し, その性能を解析することで, 「どのような探索方法が効率的か」等の課題にも取り組んでいます.

  8. カオス力学系を用いた秘匿通信

    カオスの有する複雑さを秘匿通信システムに導入する手法が提案されて います. 本研究では,カオス力学系よりも,さらに複雑なダイナミクスを有する と考えられるシステムを用いて, より秘匿性の高い新しい通信システムを開発します.


質問,意見など,池口まで.
メールは こちら
Copyright (C) 2002 Tohru Ikeguchi, Saitama University.